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イタリア半島のアドリア海側を旅する人に、ぜひ一目見ることをおすすめしたいのが「トラボッキ」です。

トラボッキって何?

サン・ヴィートのトラボッキ

「トラボッキ(trabocchi)」とは、網漁のために作られた、独特の形をした木製の建築物です。

イタリア東部の、アブルッツォ州から、プーリア州のガルガーノ地方にかけてのアドリア海沿岸で見られます。

トラボッキの材料には、この地方にたくさん自生している、潮風に強く、嵐や突風に耐えられる弾力性を持つ、アレッポ松という木が使われています。

アブルッツォ州のトラボッキは、桟橋のように海に突き出ているのが特徴で、細い木製の通路で陸とつながっているトラボッキもあります。

それに対し、ガルガーノ地方のものは、陸の岩場に直接取り付けられていて、日本の三仏寺投入堂に似た感じがあります。

このような違いがあるのは、二つの地方の地形が違うためであり、アブルッツォ州沿岸の海は浅いため、海底にトラボッキを固定できるのだそうです。

トラボッキが一番多くみられるのは、アブルッツォ州のキエーティ県で、オルトーナからヴァストにかけての海岸は「トラボッキ海岸」と呼ばれます。

トラボッキの歴史

サン・ヴィート海岸

トラボッキは、フェニキア人がもたらしたという伝承もあるようですが、トラボッキが存在したという記録が残っているのは18世紀以降です。

18世紀ころに、アブルッツォ州の漁師たちが、海に入らないで魚を捕れる装置があれば、海が荒れている天候でも漁ができる!と考えて、発明したのがトラボッキだそうです。

トラボッキ(Trabocchi)という名称は、イタリア語で「罠」を意味するトラボッケット(Trabocchetto)を語源にしています。

「トラボッコ(Trabocco)」が単数形で、その複数形が「トラボッキ(Trabocchi)」です。

ガルガーノ地方では「トラブッキ」と呼ばれます。

トラボッキでの漁の方法

サン・ヴィートのトラボッキ

トラボッキでの漁は、網漁です。魚の群れを網に捕えたら、人力(男性二人の力が必要)、もしくは電力で網を巻き上げるいう、単純な漁です。

単純ではありますが、潮の流れから、魚の群れを捕えやすい場所にトラボッキを設置することで、なかなか効果的に、しかも素早く魚を捕まえることができるのだそうです。

通常は、網を引き揚げる役と、魚の群れを発見する役などに分かれ、4人で漁をするそうです。

トラボッキで漁をする漁師さんを指す、「トラボッカンティ(traboccanti)」という言葉もあります。

トラボッキは今でも漁に使われているの?

サン・ヴィートのトラボッキ

トラボッキ漁は原始的な網漁ということもあり、現在ではあまり漁には使われていません。

多くのトラボッキは保存のために残されているだけであったり、夏場はレストランとして入場できるトラボッキもあります。

トラボッキの中にぜひ入ってみたいという方は、夏場にトラボッキ海岸を訪れるとよいでしょう。

トラボッキ海岸の風景は詩的!

サン・ヴィートのトラボッキ

トラボッキが建ち並ぶ海岸は、言葉で表しにくい、不思議な哀愁が漂っています。

この地域の出身である詩人ダヌンツィオは、トラボッキのことを「獲物を狙う巨大な蜘蛛の化け物」と表現しています。

海に向かって、網を伸ばしている様子が、大きな触覚を持つ虫に見えますね。

トラボッキを見に行くためにはどの町に行けばよい?

サン・ヴィート海岸

トラボッキを見に行くのに、電車でアクセスしやすいのは、鉄道駅がある、サン・ヴィート・キエティーノ(San Vito Chietino)か、フォッサチェージア(Fossacesia)です。

サン・ヴィート海岸の方には近くに海岸を見渡せるダヌンツィオ岬があり、フォッサチェージアは海岸を見下ろせる場所に大きな修道院があります。

駅から、最寄りのトラボッキが近いのはサン・ヴィートの方です。駅から5分程度歩くと、最初のトラボッキが見えます。徒歩30分圏内で、4つのトラボッキを見ることができます。

それに対し、フォッサチェージアは、グーグルの衛星マップで見る限り、最初のトラボッキを見るまでに、駅から歩いて30分はかかりそうです。

気軽にトラボッキを見に行きたい方はサン・ヴィートがおすすめ。私は午後の数時間しか時間が取れなかったため、サン・ヴィート海岸へ行きました。

ただし、フォッサチェージアの方が評判のよいトラボッキ・レストランは多いようです。

夏場にゆっくりレストランまで入りたい方は、修道院も近くにある、フォッサチェージアへ足を延ばす選択もありでしょう。

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この記事を書いた人
辺獄
辺獄イタリア旅行マニア
イタリア旅行マニアで今まで9回イタリアに足を運んでいます。何度でもイタリアに行く自分のために、イタリア旅行のマニュアルを作成したのがこのサイトです。