【目次】
フェラーラのシンボル「エステンセ城」。
「エステンセ城(Castello Estense)」とは、「エステ家の城」という意味で、ルネサンス期にフェラーラを統治したエステ家が、防御と住居を兼ねて建てたお城です。
ちなみに「Estense」というのは、「エステ家の」という、エステ家専用の形容詞です。専用の形容詞があるなんて、エステ家すごい…。
エステンセ城は水に囲まれたイタリアでは珍しいお城
エステンセ城の外観で、一番の特徴は、周囲を水をたたえたお堀に囲まれていることです。
イタリアのお城は、ロマンチックというより、防御のために作られた城塞が多く、防衛のためのお堀はよく目にします。
ですが、現在でも水が張ってあるお堀は、極めて珍しいです。
実はエステンセ城のお堀は、ポー川とつながっていて、そのためか、あまり淀んでいなくて、水はそこそこキレイです(「そこそこ」ですよ!)。
エステンセ城に入るためには、このお堀に架けられた、跳ね橋を渡って入ります。「跳ね橋」は、非常事態には上げられて、外からお城に入れなくなります。籠城のための仕掛けですね。
さて、この水の入ったお堀、土日には、観光客向けに、ボートで1周できるサービスがあるそうです(料金はチップ制で€1程度とか)。
私は土曜日にフェラーラにいたので、ぜひボートに乗ってみたかったのですが、同行の姉に「いやだ」と反対されたため、乗りませんでした。一人で乗る勇気はありませんでした(笑)。
エステ家の天才宮廷シェフの台所
エステンセ城に入城して、最初の見どころは、1階部分にある台所跡。
まあ台所跡なので、私のように遺跡にウトい人間には「台所跡だね」というだけなのですが、エステンセ城の台所跡は、知っておくと面白い(かもしれない)エピソードが2つ!
天才シェフ
16世紀のエステ家の宮廷料理人に、クリストフォロ・ディ・メッシスブーゴという人物がいます。
「天才料理人」と呼ばれる彼は、前菜に始まり、スープや魚・肉料理をはさんで、デザートに続く、西洋のコース料理の基礎を作ったと言われています。
彼が、数々の名レシピを生み出したのが、この台所というわけです。
真下は牢獄…
天才シェフのプロでシュースで、華やかな宴会準備をしていた台所ですが、この真下は、牢獄になっています。
牢獄には、エステ家の家族が閉じ込められていたこともあり、家族を幽閉している上の階では、華やかなパーティ準備という、エステ家の光と闇を感じられる場所になっています。
どす黒いエピソード満載の牢獄
次に見学するのが、その牢獄跡です。
牢獄跡は、1階と、地下の方に続いていきます。
こちらが地下へと降りる階段。
ヴェネツィアのドゥカーレ宮殿や、ローマのサンタンジェロ城などで、イタリアの牢獄跡を見たことがありますが、このエステンセ城の牢獄跡は、ひときわ陰鬱な雰囲気です。
入り口が低く、室内が狭く、トイレのようなものしか残っていない牢獄跡。脱獄しようという気持ちも湧いてこないほど、絶望的な雰囲気でした。
暗くて狭い場所が苦手という人は、一人で見学しない方がいいかもしれません。
「ウーゴとパリジーナの牢獄」が有名で、エステ家内で不実の恋に落ちた、義理の母と息子が幽閉されたことで知られています。
塔が見えるテラスで一息
牢獄跡を見た後は、光さす上の方の階に上ります。
上の階の建物内に入る前に、テラスに出ます。
ここで、牢獄跡で感じた閉塞感を開放するためにも、外の空気を吸ってリフレッシュしましょう。
公爵の礼拝堂
2階の最初の見どころが、公爵の礼拝堂(Cappella Ducale)。
イタリアで時々見かける、居住地内に礼拝堂を作って、家から出ないで礼拝できるようにしてしまうという、セレブ的発想です。
16世紀に作られた礼拝堂で、天井には、四福音書記者の絵が、明るい色合いで描かれています。
ギリシャ神話由来の絵画が多いエステンセ城で鑑賞できる、数少ないキリスト教絵画です。
美しい天井画に対し、壁面には、キリスト教のシンボルはほとんど描かれていません。
これは、エルコレ二世の妻、レナータがプロテスタントだったため、宗教的シンボルを作らないように命じたためと言われています。
オーロラの間
礼拝堂に続く見どころは「オーロラの間(Sala dell’Aurora)」。
オーロラというと、北欧で見られる美しい天体現象を思い浮かべてしまいますが、ここでのオーロラは、ギリシャ・ローマ神話の、曙の女神のことです。
天井に、1日の時間の変遷を寓意する絵が描かれています。
「オーロラの間」は、エルコレ二世のプライベートルームだったそうですが、起きてから寝るまでの絵が描かれていること言うことは、寝室だったということでしょうか。
オーロラの間の天井画は、ギリシャ神話の知識があった方が楽しめるので、私のできる範囲ではありますが、解説してみます。
①「時間」の寓意
真ん中に描かれているのは「時」の寓意像。
翼の生えた老人は、人間はあっという間に年老いてしまうという、「光陰矢のごとし」を表しています。
もしかしたらこの老人は、翼を持つ老人の姿で描かれることの多い、ギリシャ神話の、時を司る神・クロノスかもしれません。
②朝
「時」の寓意の真下にある絵が、朝・夜明けの時間を描いた絵です。
黄色い服を着た美人は、曙の女神アウローラ。白馬を従えて、世界に朝を運んできています。
アウローラはオーロラとも呼ばれるため、この部屋が「オーロラの間」と呼ばれるのは、この美人さんから取っています。
③昼
時間は、「時」の寓意像を中心として、右回り、時計回りと反対方向に進んでいきます。
「朝」の右上に描かれているのが、「昼」。
左側に描かれた金髪のキラキラ光っている男性が、太陽神ヘリオスです。
ギリシャ神話ではヘリオスが馬車に乗って空を駆ける姿が、東から昇り西へと沈む、太陽の動きそのものだと考えられていました。
④夕方
夕方になると、ヘリオスは役目を終えて、馬車を止めています。
ヘリオスの後ろにいる女性は、おそらくですが、月の女神セレーネー。夜を呼び寄せている仕草に見えますね。
ヘリオスの馬車の下には、夜の生き物である蛇が早くも描かれています。
⑤夜
太陽神ヘリオスが、床に就いて、眠ってしまうと、世界に夜がやってきます。
そして、ぐるっと回って、次の「朝」へと続いていきます。
遊戯の小広間
「オーロラの間」と並ぶ、エステンセ城最大の見どころが、「遊戯の小広間(Saletta dei Giochi)」と「遊戯の大広間(Salone dei giochi)」。
オーロラの間から続いている部屋が、「遊戯の小広間(Saletta dei Giochi)」で、青色の鮮やかさが目を引くお部屋です。
天井の中心に描かれた、4人の女性が手をつないでいる絵は、オーロラの間のテーマを引き継いでいます。
オーロラの間では、1日のうちの4つの移り変わる「時間帯」が描かれていますが、ここでは4つの移り変わる「季節」が描かれ、1年という時間を表しています。
その周囲には、キリスト教やギリシャ神話にくわしくなくても楽しめる、古代のローマオリンピックの競技が描かれています。
古代のレスリング。
輪になって踊る天使たち。
マッパの男性たちがスポーツに勤しむ姿や、それを真似しているみたいに、ちび天使たちがスポーツ遊びをしている姿が、どことなくユーモラスに感じられます。
遊戯の大広間(Salone dei giochi)
小広間の次には、「遊戯の大広間」があります。
小広間よりも長く、その分面積が広い部屋です。
小広間の方が色彩が鮮やかですが、大広間の方は、落ち着いた色合いながら、現代の私たちでも見てわかるスポーツが描かれていて、下知識なしに楽しめます。
水泳。真ん中の男性が大きすぎますが、楽しそう。
円盤投げ。というより、フリスビーに近い?
エステンセ城観光の所要時間の目安
エステンセ城観光のための時間として、私は1時間強確保したのですが、内部が想像以上におもしろく、全然時間が足りませんでした。
エステンセ城見学の、所要時間の目安は、サクサク観光の人は1時間、じっくり観光の方は1時間半~2時間くらいです。
「遊戯の大広間」より後は、紋章や地図が描かれた部屋などがあります。
その後の順路は、内部が新しく修復された近代的な感じになっていて、比較的新しい時代の絵が展示されていました。
近代・現代絵画にそれほど興味がない場合は、このエリアは、サクサク歩きましょう。出口に出るまでが、結構長いです。
「レオーネの塔」について
エステンセ城には4つの塔がありますが、追加料金(€2)で、レオーネの塔に上れます。
私は上る時間がなかったのですが、フェラーラの計画都市を上から眺めるのは面白そうですよね。
レオーネの塔には、遊戯の小広間から上れますが、係員さんに聞いてみると、エステンセ城見学と違う日に、塔だけ入場することも可能だそうです。
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