【目次】
スクロヴェーニ礼拝堂は、15分もしくは20分という、限られた時間内に、礼拝堂一面に描かれたフレスコ画を鑑賞します。
何十枚もの場面ごとに分かれた壁画を、15分~20分でじっくり楽しむのは、残念ながら不可能です。
私は、同じ日の午後と夕方に2度入場し、トータルで30分鑑賞しましたが、それでも足りませんでした。
スクロヴェーニ礼拝堂鑑賞は見る順番を決めて見よう
私がスクロヴェーニ礼拝堂に入って、短い時間でこの大作を鑑賞した感想としては、優先順位をつけて鑑賞するのが、見学のコツだと思いました。
時間が短いからとあせって鑑賞せずに、優先順位を低くした部分は、見れなくてもいいや、というくらい割り切って、気に入った部分は存分に時間をかけて鑑賞しましょう。
「あと何分で全部見なきゃ…」という心持ちで見学すると、気持ちがあせって、せっかく見学している絵も、しっかり心に入ってこなくなります。
個人的におすすめなのは、最後の審判→イエス・キリストの生涯→7つの悪徳→7つの善→聖母マリアの生涯→聖ヨアキムの生涯→受胎告知という見学順です。
この見学順に従って、私の力の及ぶ限りではありますが、スクロヴェーニ礼拝堂の、どこに何が描いてあるかを画像付きで解説します!
1.最後の審判
まず、入場したら、正面の一番突き当たり、礼拝堂の出口にあたる部分の『最後の審判』が描かれている壁に、まっすぐ進みましょう。
入り口から一番遠い、この壁から観賞を始める人は少ないので、人が少ないうちに見学してしまいましょう。
この『最後の審判』の下の部分には、スクロヴェーニ礼拝堂を聖母マリアに捧げている、エンリコ・スクロヴェーニの姿が描かれています。
紫色の服を着た、横顔の人物がエンリコ・スクロヴェーニ。礼拝堂を支えている白い服の男性は、礼拝堂を作る際に助言をくれた人物だとか。
個人的には、イエス・キリストの周囲で終末を告げるラッパを吹く、イケメン天使たちの眼差しが好きです。
ステキな天使たちの眼差し!この画像は、天使のイケメン度がわかるように、90度回転させています。実際の絵では、この天使たちは、イエスキリストを包む虹から、横方向に突き出ています。
上の方には、天使が青い壁を巻きとろうとしている、遊び心のある絵が!巻き取った後ろにちらっと見えているのは、天国の門だとか。画像がうまく撮れていなくて申し訳ない!
最後の審判の日には、全ての死者がよみがえります。お墓から起き上がっている人々の姿が、どこかユーモラスです。
2.イエス・キリストの生涯
他の見学者が『最後の審判』に移動してきたタイミングで、『イエス・キリストの生涯』の観賞にうつりましょう。
左右の壁、下から2段に分かれた部分にずらーっと描かれているのが、イエス・キリストの生涯です。
この絵は時系列で並んでいて、入り口側から見て左側の壁、上の段からスタートします。
『最後の審判』の反対側の壁に『受胎告知』が描かれています。ここでイエスが誕生して、ここから物語がスタート。
上の段を時計回りと反対方向にぐるっと回り、それから下の段へと続き、またぐるっと回ります。
本当は、この時系列に沿って、順番で鑑賞したいところですが、何せ15~20分しかなく、他の鑑賞者がいる場合、待つ時間が惜しいので、臨機応変に動きましょう。
このイエス・キリストの生涯の中で、特にじっくり鑑賞をおすすめする絵をいくつかご紹介します。
受胎告知から見て左側(窓のある壁)の絵
エジプトへの逃避(上段右から2番目)
聖母マリアが、幼いイエスを連れ、神の子イエスを殺害しようとするヘロデ王から逃げるために、エジプトへと向かう図。
聖母マリアの、我が子を守ろうとする、厳しく使命に燃えた目に惹きつけられる作品です。
最後の晩餐(下段一番左)
日本人にもなじみの深い『最後の晩餐』の図。ルネサンス期の画家の作品と比べると、まだ人物に硬さが見られますが、隣同士の弟子が顔を合わせる緊迫感などが伝わる作品です。
ユダは、後ろ向きに座っている人物の、一番左側、薄い黄色の衣服を着た人物とされます。
ユダの接吻(下段真ん中)
こちらはスクロヴェーニ礼拝堂でも、最も有名な絵のひとつですね。私の写真がヘタすぎて、非常に申し訳ない!時間がなくてあせっている私の気持ちが伝わってくる写真ですね…。
ユダが、イエス・キリストに接吻することによって、イエスを捕えようとしている兵士たちに、どの人がイエスかを伝えるというシーンです。
イエスとユダ、両者の表情が何ともいえない作品です。この写真じゃわからないですけど(苦笑)、実物で感動してくださいっ!
受胎告知から見て右側(窓がない壁)の絵
磔刑(下段左から2番目)
こちらは、イエス・キリストの足元にひざまずく、マグダラのマリアの悲しみの表情に心打たれる作品です。
マグダラの、心の底からの悲しみが見るものに伝わってくる絵で、人間感情を豊かに描くルネサンスへの道は、ここで拓かれたのだということを実感します。
イエスを迎えに来ている、悲しそうな天使たちの「空を飛んでる感じ」も見事です。
哀悼(下段左から3番目)
『磔刑』に続く作品ですが、こちらも人物たちの悲哀の表情が見事です。
人々の悲しみもさることながら、上空で悲しんでいる天使たちがいい味出してますね。天使がいっしょに悲しんでいる『哀悼』の図は珍しいです。
3.7つの美徳・悪徳の擬人像
イエス・キリストの物語を見た後は、ちょっと目を休める意味でも、その下に描かれている、モノトーンの7つの美徳・悪徳の擬人像を鑑賞しましょう。
美徳・悪徳像は、目線の一番低い位置にあり、鑑賞しやすいです。
7つの美徳
7つの美徳は、『最後の審判』の絵の、イエス・キリストの右側に描かれている天国側へ、続いてくように描かれています(窓のある壁の下方)。
『最後の審判』から遠い方から、賢明、剛毅、節制、正義、信仰、慈愛、希望と続きます。
7つの悪徳
7つの悪徳は、地獄の側へ向かっていくように、窓のない壁の下方に描かれています。
『最後の審判』から遠い方から見て、愚鈍、移り気、憤怒、不正、不信仰、嫉妬、絶望です。
お向かいに描かれている美徳と、「希望・絶望」「慈愛・嫉妬」「信仰・不信仰」…というように、セットになっています。
現在日本で知られている「7つの大罪」とは少し異なり、「色欲」「暴食」はありません。
4.天井画
このあたりで、一度、真上を見上げておきましょう。青の星空が広がっています。
スクロヴェーニ礼拝堂の青天井は、ラヴェンナのガッラ・プラチーディアの廟の、天井の星空モザイクにインスピレーションを得たと言われています。
5.聖母マリアの生涯
さて、まだ時間があったら、『受胎告知』の壁から見て右側の壁の最上段、聖母マリア伝を鑑賞しましょう。
時系列は、『最後の審判』側から進みます。最後に、実は『受胎告知』に続き、そのままイエス・キリスト伝に続くと言う、粋な作りになっています。
こちらは2枚目の『マリアの神殿奉納』。幼い少女であるマリアが描かれています。
6.ヨアキム伝
まだ時間がある!どんと来い!という場合は、マリア伝の反対側に描かれたヨアキム伝を見学しましょう。
ヨアキムはマリアの父です。妻のアンナが、マリアを身ごもるまでが描かれます。
時系列は、『受胎告知』側から『最後の審判』側へ。そして、そのままマリア伝の最初の1枚、マリアの誕生に続いていくという仕掛けです。
こちらは『ヨアキムの夢』。眠っているヨアキムの夢に天使が表れ、妻アンナがマリアを身ごもったことを告げるシーンです。
聖母マリアの生涯と、ヨアキム伝は、イエス・キリストの物語と比べてなじみがない人が多く、また、上の方に描かれていて、キリスト伝ほどはよく見えないので、後で見るという順番にしてみました。
7.『受胎告知』のある内陣の壁
最後に、『最後の審判』のお向かいの壁を見学しましょう。
スクロヴェーニ礼拝堂は、体温調整室から入場するため、礼拝堂の形をあまり意識することなく見学しますが、実は、一番フレスコ画が少ないこちらの壁が、礼拝堂の内陣(祭壇)がある部分です。
こちら側は、一番下にキリストの生涯の一部、真ん中が、左のガブリエルと右の聖母マリアに分かれている『受胎告知』です。
一番上の絵はあまり状態がよくありませんが、ジョットではなくジョヴァンニ・ピサーニ作の絵だそうです。
細部にも興味深い絵が…
私の力の及ぶ限り解説してみましたが、ごらんの通り、7つの美徳・悪徳の写真は、全部を撮影しきれませんでした。
本当に、これだけのフレスコ画を、15~20分で、写真も撮りながら見学するのは至難の業です。ちなみに写真撮影は以前は禁止でしたが、2018年現在は、フラッシュなしで撮影することができます。
しかも、ここには紹介しきれないほど、絵と絵の合間などにも、目を惹く興味深い小さな絵がたくさん描かれています。
私は1度の見学では全く時間が足りず、その日のうちにもう一度予約を取り直し、2回入場しました。2回目は、鑑賞に集中するため、カメラ撮影はほとんど行いませんでした。
それでも、やっぱり消化不良に感じたスクロヴェーニ礼拝堂なのでした。
最初にも書きましたが、「見れなかった部分は諦める」くらいに割り切って、「これだけはじっくりと見たい絵」を、いくつかピックアップしておくとよいでしょう。
スクロヴェーニ礼拝堂の壁画の大部分は、こちらの本で、フルカラーで解説つきで見ることができます
マリア伝やヨアキム伝も詳しく載っていますので、もっと深く予習したいという方におすすめです!
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