【目次】
バチカン美術館に行くなら予習を!
ローマのバチカン美術館とは。カトリックの総本山・バチカン市国内にある、歴代の教皇が威信をかけて集めた芸術品を展示する、世界最大級の美術館です(バチカン博物館とも言われます)。
「歴史の教科書で見たあの作品!」という瞬間がたくさん!
ローマ観光では外せないスポットですが、見どころが多すぎ&館内広すぎで、上手に鑑賞するなら回る順番を決めておくなど事前の準備がおすすめです。
このページではバチカン美術館の見どころや、所要時間の目安、館内の休憩処、予約が必要かどうか…など、バチカン美術館訪問に役立ちそうな情報を、マニュアルとしてまとめてみました。
このページに書いてあること!
バチカン美術館は「4大見どころ」を中心に鑑賞しよう
バチカン美術館の中には「ピオ・クレメンティーノ美術館」「ピナコテカ(絵画館)」「エジプト美術館」…などと、軽く20を超える複数の美術館が入っています。
実は、「バチカン美術館」は複数の美術館をまとめて呼ぶ時の名前なんです。
実は複数形!
バチカン美術館はイタリア語では「musei vaticani(ムゼイ・ヴァティカーニ)。英語のmuseum(ミュージアム)に当たる単語が、「musei」と複数形になっています。正確に訳すと「バチカンにある博物館群」なんですね。
「バチカン美術館に入っている20以上の美術館・博物館を見学する」となると、ぶっちゃけ丸一日滞在しても、すべてをしっかり鑑賞するのは困難です。
そのため、時間が限られた観光の場合はポイントをしぼって観賞することをおすすめします。
バチカン美術館の見どころは大きく4つ!
- ミケランジェロの超大作がある「システィーナ礼拝堂」
- ラファエロの大作だらけの「ラファエロの間」
- 古代の傑作彫刻ラオコーンがある「ピオ・クレメンティーノ美術館」
- ルネサンスの傑作絵画目白押しの「ピナコテカ(絵画館)」
この4大見どころに重点を置いて鑑賞しよう!
ここからは、バチカン美術館4大見どころ「システィーナ礼拝堂」「ラファエロの間」「ピオ・クレメンティーノ美術館」「ピナコテカ(絵画館)」の、見逃せない有名作品や、鑑賞の際に注意したいことをまとめていきます。
システィーナ礼拝堂
システィーナ礼拝堂(Cappella sistina)は、言わずと知れた、バチカン美術館最大の見どころです。
システィーナ礼拝堂の必見作品
システィーナ礼拝堂の必見作品、ミケランジェロの「創世記」「最後の審判」と、隠れた名作である南北の壁画「モーセ伝」「キリスト伝」をご紹介します!
ミケランジェロの天井画「創世記」
システィーナ礼拝堂の天井画は、世界で最も有名な絵のひとつでしょう。
ルネサンスの巨匠ミケランジェロ作で、旧約聖書の物語をモチーフにした絵が描かれています。
最も有名な部分は、神が世界を作り、人間(アダムとイブ)を作り、アダムとイブがりんごを食べて楽園を追放される…という「創世記」の場面です。
この部分ですね。画像に入りきっていませんが、「太陽と月の創造」の左側には「光と闇の分離」があり、創世記のストーリーに忠実に沿っています。
キリスト教徒でない私でも「神々しい…」と感じる壮大さ!
創世記のストーリーをザっと頭に入れておくと、より深く楽しめます。
この中でも「教科書で見たあの絵!」と叫びたくなるのは、こちら。
「アダムの創造」。
自らが作ったアダムを厳しさと心配さをこめた目で見つめながら、アダムを世界に送り出している神。もはや我が子を見守る親のまなざし。
それに対し、神からの期待を受けとめつつも、どこか頼りない雰囲気のアダム。見る人によっていろいろな感想があると思いますが…うーん、やっぱり素敵な絵ですね!
「原罪」「楽園追放」も有名ですね。
面白いのは蛇の描き方。上半身は人間なんです。
蛇はイブをそそのかした罪で、地面を這う生き物に変えられてしまいました。「もともと蛇は人間に似た頭と二本の手を持っていた」と想像したのでしょうね。
天井画を見るのにオペラグラスは必要?
ミケランジェロの天井画が描かれている天井は20メートルほどの高さで、オペラグラスを持ち込んで天井画を鑑賞する人もいます。私の視力はコンタクト入れて1.0くらい程度ですが、肉眼でじゅうぶん楽しめました。よっぽど細部が見たいというのでなければ、オペラグラスは必須ではないです。
ミケランジェロの壁画「最後の審判」
システィーナ礼拝堂の入り口側の壁には、ミケランジェロの「最後の審判」が描かれています。
タテは約14メートル、横は12メートルの大作!ビル4~5階分の大きさで、非常にスケールがデカイ!
作品が大きい上に、筋肉モリモリの人物が400人以上描かれ、とにかく迫力があります。
「最後の審判」プチ解説
上方にキリストと聖母マリアを中心とした、天国が描かれています。
キリストから見て右手下が煉獄(れんごく)。生前に少しくらいは悪いこともした人(要するに普通の人)が自分の罪を浄化する場所です。最後の審判で許されて、天国に引き上げられる姿が描かれます。
左手下は地獄。右側とは対照的に、決して許されない罪を犯した人々が、地獄に落とされる姿が描かれています。
キリストのすぐ左下にいる老人は聖バルトロメオ。皮を剥がれて殉教した聖人で、自分の剥がされた皮を手に持っています。
この剥がされた皮の顔はミケランジェロの自画像と言われています!
ミケランジェロの茶目っ気、ですかね~?
左右の壁画も実はスゴイ!「キリスト伝」「モーセ伝」
ミケランジェロの天井画「創世記」と、入り口側の壁画「最後の審判」だけでもお腹いっぱい…!
…と言いたくなりますが、側面の長い方の壁も、ボッティチェリ、ギルランダイオ、ペルジーノ、ルカ・シニョレッリなどの、ルネサンス期の巨匠が競作した壁画で埋め尽くされています。
これらの壁画は、システィーナ礼拝堂でない他の場所にあればもっと知られている作品なのでしょうが、ミケランジェロの大作が圧倒的すぎて、あまり観光客の注意を引いていません。
かくいう私もシスティーナ礼拝堂には2回行ってるのですが、まだしっかり鑑賞できていません。2回目は時間前に追い出されてしまった(後述します!)せいもあるんですが…。
次に自分がシスティーナ礼拝堂に行くときのために、左右の壁の作品についてまとめておきました。興味のある方は活用してくださいませ!
「キリスト伝」「モーセ伝」のそれぞれの作品名、製作者には諸説ありますが、バチカン美術館公式サイトの記述に従っています。
システィーナ礼拝堂は写真撮影や過度のおしゃべりは禁止
バチカン美術館自体は、撮影OKのエリアが多いですが、システィーナ礼拝堂内部は写真撮影禁止です(このページの写真も画像配布サイトを利用しています)。
また、礼拝堂内での座り込みや、大きな声でのおしゃべりが禁止されていて、係員やアナウンスに注意されます。
しかし、係員たちが人が少ない時間帯にキャッキャとふざけ合っているのを私は目撃したぞ…
システィーナ礼拝堂は宗教施設のため、露出の多い服装では入れないことになっています。入場を止められている人を見たことはないですが、肩や膝が隠れる服装で行きましょう。
システィーナ礼拝堂はどこにあるの?
システィーナ礼拝堂は、バチカン美術館の入口からかなり遠いエリアにあります。
直線距離でも400~500mあります。最短距離で直行しても、階段を降りたり上ったり、他の鑑賞者を追い抜いたりしながら進むと10~15分はかかるでしょう。
システィーナ礼拝堂を目当てにバチカン美術館に行く場合は、システィーナ礼拝堂にたどり着く前に力尽きないように、体力を温存して鑑賞して下さい。
バチカン内は広いですが、システィーナ礼拝堂の案内表示は、館内至る所にあるので、迷わずにたどり着けます。
システィーナ礼拝堂を空いた状態で見るには?
バチカン美術館最大の見どころであるシスティーナ礼拝堂は、いつも大混雑しています。
なるべく空いた状態で見たい場合は、朝一番でバチカン美術館に入場し、他の展示室には脇目もふらず、一心不乱に「Cappella Sistina」の矢印に従って、まっすぐシスティーナ礼拝堂を目指すのがおすすめです。
システィナ礼拝堂はイタリア語で「Capella sistina(カペッラ・システィーナ)」です。
いっしょに朝一番で入場した人のほとんどは、他の見どころでも足を止めます。
他の人がたどりつく前に、一直線にシスティーナ礼拝堂まで行ってしまえば、一番乗りで人が少ない状態で見学できますね!
システィーナ礼拝堂に最短距離で行く方法
- 入口から正面の階段を上るのが最初のポイント。ここでピオ・クレメンティーノ美術館方面へ左折しないこと!
- システィーナ礼拝堂へは往路・復路ともに一方通行。往路は上の階の通路で「大燭台のギャラリー」「タペストリーの間」「地図の間」とまっすぐ進む
- 上階の通路の突き当りで「ラファエロの間」に左折せず、正面の階段を下りると最短でシスティーナ礼拝堂へ行ける
システィーナ礼拝堂への最短距離は「ラファエロの間」をスキップしますが、「ラファエロの間」には寄り道して、こちらも人が少ないうちに見てしまうのもアリです。
ラファエロの間からシスティーナ礼拝堂への近道
「ラファエロの間」を見た後、最初の下り階段を降りると、ボルジアの間(Appartamento Borgia)や近代絵画館などを経由し、システィーナ礼拝堂へは遠回りになってしまいます。
「ラファエロの間」の後にシスティーナ礼拝堂に直行したい場合は、最初の階段を下りずにまっすぐ通り抜けて、ラファエロの間の入口付近に戻ります(地図の間などがある通路の突き当り)。
ココにあるシスティーナ礼拝堂行きの近道階段を下りましょう。
ただしこの行き方は失敗談もチラホラあり、ラファエロの間の入口付近に戻る道は閉鎖されていることがあるかも。その時は遠回りで元気よくGO!
さて。システィーナ礼拝堂に直行すると、「すっ飛ばした展示室が後から見学できないのでは?」と心配になると思いますが、広い広いバチカン美術館には、総合案内所のような、クロークやオーディオガイド貸出カウンターがあるエリアがあります。
この総合案内所がバチカン美術館鑑賞のスタート地点で、それぞれの見所を見て回った後は、美術館を退館する前に、総合案内所に戻れる構造になっています。
ですので、システィーナ礼拝堂を見たあと総合案内所に戻ってくれば、最初から見学しなおすことができます。
超絶カンタンな館内図
ラオコーンとラファエロの間は、システィーナ礼拝堂に行く途中にあって、飛ばしちゃうこともできるよ。飛ばしても総合案内所に戻ってきたら、また行き直せる!
システィーナ礼拝堂の後に総合案内所に戻ってくるのは、それほど難しくありません。順路通りに進めば総合案内所に戻ってきます(システィーナ礼拝堂への道は、行きも帰りも一方通行。往路と復路で違う道を通ります)。
ただし間違って、限られたツアー客専用のサン・ピエトロ大聖堂直行通路に迷い込んでしまう人がいるようです(この道に続く扉はいつも開いてるわけではないですが)。
心配な場合は、システィーナ礼拝堂を見学した後、館内のスタッフに「ピナコテカ(絵画館)」に行く道を尋ねるようにすれば、総合案内所に戻って来れます(いったん総合案内所に戻ってから行く構造のため)。
ラファエロの間
システィーナ礼拝堂に次ぐバチカン美術館の人気スポットが、ラファエロの間(Stanze di Raffaello)です。
ラファエロとその弟子たちが天井画・壁画を手掛けています。
4室あるラファエロの間…必見は第2室と第3室!
ラファエロの間は4つの部屋に分かれています。
- 第1室「コンスタンティヌスの間」Sala di Constantino
- 第2室「ヘリオドロスの間」Stanze di Eliodoro
- 第3室「署名の間」Stanza della Segnatura
- 第4室「火災の間」Stanze dell’Incendio di Borgo
この4つの部屋、すべて「ラファエロの間」と呼ばれていますが、ラファエロが大きく関わっているのは第2室の「ヘリオドロスの間」と第3室の「署名の間」の2つです。
残りの2つの部屋は、ラファエロの弟子が仕上げている部分が多く、完成度という点ではやはり第2室と第3室には及ばないかな…という感じ。
あまり時間がない場合は、第2室と第3室を重点的に鑑賞するのがおすすめです。
ラファエロの間の必見作品ベスト3!
ラファエロの間の第2室と第3室は、天才画家ラファエロの絵がビッシリと描かれ、どの作品も素晴らしく、まばゆさで頭がクラクラしそうになります。
その中でも特に傑作だと言える必見作品は3つ!
- アテネの学堂
- 聖ペテロの解放
- 聖体の論議
それぞれ簡単に説明するね!
アテネの学堂
まずは第3室にある「アテネの学堂」。あまりにも有名すぎる作品ですね。
古代ギリシャの学者たちを50人以上描いていますが、画面が均整が取れていてごちゃごちゃしていません。
ルネサンスの真髄!
ラファエロはどの人物が誰なのかを明記していないため、それぞれ誰を描いているのかは不明です。が、何人かの人物は「この人は〇〇だろう」と推測されています。
ここでは一般的な説に従って、代表的な人物を記しておきます。
プラトンのモデルはレオナルド・ダ・ヴィンチ、ヘラクレイトスのモデルはミケランジェロだと言われています。
また、作品内にはこちら(鑑賞者側)を見ている人物が二人います。右端は古代ギリシャの天才画家アペレスで、ラファエロ自身がモデル…つまり自画像です。
左側の白い服を着た人物は古代ギリシャの女性天文学者のヒュパティアで、こちらはラファエロの愛人・マルゲリータがモデルだとか。
天才画家の顔を自画像にしちゃうとか、愛人を絵の中に描きこんじゃうとか…ラファエロは天才画家ですが、性格は自己愛が強く、フツーの人間という感じがしますよね。
聖ペテロの解放
第2室にある「聖ペテロの解放」は、日本での知名度は低いように思えますが、個人的にはラファエロの作品の中でも特に好きな作品です。
天使が聖ペテロを救いに来る瞬間を、牢獄の鉄格子越しに目撃するドラマチックさ!牢獄の暗さと、天使の光のコントラストも素晴らしい!
聖ペテロはイタリア語ではサン・ピエトロ。初代教皇です。バチカンのサン・ピエトロ大聖堂の主役である聖人ですね。
「教皇は天使によって救われる」…いかにもバチカンらしいテーマだなあ…
聖体の論議
「聖体の論議」は第3室で、「アテネの学堂」と向かい合っている作品です。
「アテネの学堂」ほど有名ではありませんが、静的な天上界と、動的な地上階のコントラストが素晴らしいです。個々の人物の表情もラファエロらしい深みを感じます。
個人的にこの絵で大好きなのは、4つの福音書を持って飛んでいる小さな天使たち!
ラファエロの描く小さな天使たちは本当にカワイイ!
ラファエロの間の順路について
ラファエロの間は、脇にある通路を伝って、奥にある第1室から順番に回ります。
真ん中の2つの部屋が見どころの多い第2室と第3室です。
ラファエロの間は、時期によっては第4室→第3室…と、逆の順に見学となることがあります。
そのせいで方向感覚がおかしくなることがありますが、どちらからの見学でも、順路通り進めばどこかの部屋を飛ばしてしまう心配はありません。
ラファエロの間はどこにあるの?
ラファエロの間は、順路では後ろのほうにあります。
システィーナ礼拝堂と近いですが、入り口やシスティーナ礼拝堂があるフロアより1つ上の階(表記としては2階)にあります。
入口からシスティーナ礼拝堂までは、2階の通路が往路・1階の通路が復路と、一方通行になっています。
そのため「ラファエロの間→システィーナ礼拝堂」という順序で見学する形になり、逆の順番では見学できません。
システィーナ礼拝堂からラファエロの間へ逆行はできないよ(空いている時間帯は見逃してもらえる場合もあるけど…)!システィーナ礼拝堂まで行っちゃうと、ラファエロの間に行きたい場合は入口まで戻らなきゃです。
ピオ・クレメンティーノ美術館
システィーナ礼拝堂とラファエロの間が、バチカン美術館の二大人気スポット。
では三番人気は何かというと、やはり「ラオコーン像」を推したいです。
ラオコーン像はピオ・クレメンティーノ美術館(Museo Pio-Clementino)内にあります。古代彫刻が多く集められた美術館です。
必見!ラオコーン像
こちらが「ラオコーン像」です。
世界史の教科書でも見たことある!
…という方も多いでしょう。ヘレニズム期の傑作と言われる(制作年代には諸説あり)彫像です。
すごくかわいそうな感じの彫像なのですが、どんな場面かというと…
「ラオコーン像」の状況は?
舞台はギリシャ神話におけるトロイ戦争。アカイア軍がトロイ軍にしかけた「トロイの木馬」を、トロイの神官ラオコーンは「敵の罠だ!」と見破りました。しかし、アカイア軍に味方する女神アテナがラオコーンに向かって毒蛇を放ち、ラオコーンは二人の息子と共に毒蛇に殺されてしまいました。
めっちゃかわいそう…。ラオコーンは自分の役目を果たそうとしただけなのに…
ラオコーン像があるのは「八角形の中庭(Cortile Ottagono)」。別名「ベルヴェデーレの中庭(Cortile del Belvedere)」とも呼ばれます。
ラオコーン像以外にも必見作品が!
八角形の中庭には、ラオコーン像以外にもぜひ拝顔しておきたいイケメン像があります。
こちらギリシャ神話のイケメン神様アポロン像。「ベルヴェデーレのアポロ(Apollo del Belvedere)」と呼ばれるローマ時代の彫像です。
こちらはギリシャ神話の英雄ペルセウス像。左手には切り落とした怪物メドゥーサの首。
数々の古代彫刻の中になじんで佇んでいますが、実は18~19世紀頃の彫刻家カノーヴァの作品なんです。
アポロ像にポーズが似ていて、カノーヴァがアポロ像からインスピレーションを得て制作したと言われています。
ペルセウスは、女神アテナの寵愛を受けた英雄です。
ラオコーンはアテナに殺されてしまったことを考えると、近くにペルセウスがいるのがカワイソウ…。
ピオ・クレメンティーノ美術館はどこにあるの?
ピオ・クレメンティーノ美術館は入口にある総合案内所の左手、順路の最初の方にあります。
ピオクレメンティーノ美術館に順路通りに向かうなら、順路の4番目です。
ピオ・クレメンティーノ美術館の順路
- 入口から左へ行きエジプト美術館へ
- 右折してキアラモンティ美術館へ
- 右折して新回廊へ。新回廊の突き当たりでUターンして戻る
- エジプト美術館方向には戻らず、正面の階段を上りピオ・クレメンティーノ美術館へ
「エジプト美術館」「キアラモンティ美術館」「新回廊」には立ち寄らずに、直接ピオ・クレメンティーノ美術館へ行くこともできます。
その場合は入口左手から中庭へ出て、松ぼっくりのオブジェの前をまっすぐ通過します。
中庭を横切ったらまた館内に戻り、ピオ・クレメンティーノ美術館に続く階段を上ります。
こんな感じで、ピオ・クレメンティーノ美術館に直行できます。
「エジプト美術館」「キアラモンティ美術館」「新回廊」は行くべき?
ピオ・クレメンティーノ美術館の前にある3つの美術館は「古代史・古代彫刻に興味がある人」におすすめです。「新回廊」には有名なアウグストゥスの像があります。このあたりはピオ・クレメンティーノ美術館まで含めて主に古代彫刻が続くエリアです。あまり時間がなく、かつ「彫刻より絵画が好き」な場合は、ピオ・クレメンティーノ美術館以外はスキップしてピナコテカ(絵画館)へ行く時間を作るとよいでしょう。
ピナコテカ(絵画館)
バチカン美術館には、絵画作品を集めた「絵画館」…イタリア語でピナコテカ(Pinacoteca)があります。
ピナコテカは、システィーナ礼拝堂や、ラファエロの間の人気ぶりに押されてしまって、バチカン美術館内ではあまり目立っていません。
ですが、鑑賞せずに済ませるには惜しすぎる、すさまじいコレクション!
ラファエロ、レオナルド・ダ・ヴィンチ、カラヴァッジョ、フィリッポ・リッピ、ベッリーニなど、ルネサンス期の天才画家たちの作品が集結しています。
ピナコテカのおすすめ絵画ベスト5!
- ラファエロ「聖母戴冠」
- ラファエロ「フォリーニョの聖母」
- ラファエロ「キリストの変容」
- メロッツォ・ダ・フォルリ「楽隊の天使」
- レオナルド・ダ・ヴィンチ「聖ヒエロニムス」
それぞれ簡単にご紹介します!
ラファエロ3作品
ピナコテカは、ラファエロの傑作を3作品も所蔵しています。3つの作品は、隣り合って展示されています。
実はこの3つの作品、制作した年がそれぞれ10年くらいずつ空いていて、ラファエロ絵画の「初期」「盛期」「晩年」の特色を見くらべることができるんです!
初期作品「聖母戴冠」
一番右に置かれた作品はラファエロの初期作品です。テーマは「聖母戴冠」。
聖母マリアが死後に天上界でキリストから戴冠される様子と、それを地上から見上げる十二弟子が描かれています。
ラファエロが「聖母戴冠」を描いたのは二十歳ごろ。若い頃の作品で、まだ師匠のペルジーノの影響が大きい作品です。
右側のバイオリンを弾いている天使のように、伏し目がちに小さな口元で淡く微笑む表情が、師匠のベルジーニの絵の特徴によく似ています。
盛期作品「フォリーニョの聖母」
左側の作品は、ラファエロの盛期作品と言われる「フォリーニョの聖母」です。
「聖母の戴冠」から約10年後、30歳頃のラファエロが制作しています。円熟期の作品ですね。
宗教画の風味が残っている「聖母の戴冠」とくらべて、人物がイキイキとしていてリアリティが感じられ、「いかにもルネサンス」という感じ!
また、それぞれ画面上部に描かれた小さな天使たちの描き方にも変化が見られます。
「聖母の戴冠」では生首に羽が生えた天使がぎこちなく飛んでいますが、「フォリーニョの聖母」は聖母子を取り囲む雲の中に天使が描きこまれ、自然な感じに仕上がっています。
「フォリーニョの聖母」は、絵の中に未確認飛行物体(!)が描かれていることでも有名です。
聖母子と、地面に立つ子ども姿の天使の間に、よーく見ると赤い火の玉が!
この赤い火の玉は、絵の依頼主シジスモンド(右に座っている赤いマントの人物)の家の近くに隕石が落ちたことに由来しているという説が有力です。
絶筆「キリストの変容」
三作の真ん中に展示されている「キリストの変容」は、ラファエロの絶筆です。
「フォリーニョの聖母」から約10年後の1520年頃に、ラファエロが死の直前まで手掛けた作品です。
タイトルは「キリストの変容」ですが、「キリストの変容」を描いているのは上半分だけです。
下半分はどんな場面かというと…私は初めて見た時は、下の人々は宙に浮いているキリストを見て驚いているのかと思いましたが…違いますッ!
聖書の「キリストの変容」に関するエピソード
キリストは12人の弟子のうち3人だけ連れて山に登り、そこで「キリストの変容」が起こります。ふもとの町に残された弟子たちは、悪霊に憑かれた少年の父親に助けを求められましたが、少年を治すことができませんでした。そこにキリストが帰ってきて、少年から悪霊を追い払います。
つまり、山の上で「キリストの変容」が起こっている時に、山の下で弟子たちが少年の悪霊祓いに手こずっている…上と下はちょうど同じ時に起こっている場面を描いているんですね。
勝手にセリフをつけちゃいましたが、だいたいこんな場面ということかな。
このラファエロ最晩年の作品は、ルネサンス晩期で、次のマニエリスム期へと突入しようとする時期に描かれています。
「ルネサンス」と「マニエリスム」の違いは?
ルネサンス美術は均整の取れた美が特徴ですが、次の時代のマニエリスム美術は、人体のねじれや誇張表現が多くなります。
「キリストの変容」に描かれた、悪魔憑きの少年のねじれた身体や、人物たちの大げさなポーズが、マニエリスム期の到来を感じさせますね。
ラファエロ三作品の比較まとめ
制作年代 | ラファエロの年齢 | 特徴 | |
---|---|---|---|
聖母戴冠 | 1502~4年頃 | 約20歳 | 師ペルジーノの影響が強い |
フォリーニョの聖母 | 1511~2年頃 | 約30歳 | ルネサンス的な人物表現の豊かさ |
キリストの変容 | 1520年頃 | 37歳(没年齢) | マニエリスム的な人体の誇張表現 |
メロッツォ・ダ・フォルリ「奏楽の天使」
ピナコテカで、特に鑑賞をおすすめしたいのが、メロッツォ・ダ・フォルリの「奏楽の天使」。1480年頃のルネサンス絵画。
もともとサンティ・アポストリ聖堂という教会にあった壁画を、教会が取り壊される際に、壁だけ剥がしてバチカン美術館に持ってきたものだそうです。
そのため、ヒビ割れた壁に描かれた天使たちが、断片的に残っています。
ひびが入っていようと、主がいなかろうと(同じ絵の中心に描かれていたキリストの絵だけは現大統領官邸にあるらしい)、音楽だけは響き続けている…みたいな、ちょっと感動を覚える絵です。
レオナルド・ダ・ヴィンチ「聖ヒエロニムス」
ピナコテカで人気の作品のひとつが、レオナルド・ダ・ヴィンチの「聖ヒエロニムス」。
未完成の作品で、着色されていませんが、同じ美術館にミケランジェロ、ラファエロ、レオナルド・ダ・ヴィンチという、ルネサンスの三巨匠の絵画作品がそろっていること自体がスゴイ!
ミケランジェロは絵画が少ないし、レオナルド・ダ・ヴィンチは作品自体が少ないし、もしかしたら三巨匠の絵画を全部見れるのはバチカン美術館とフィレンツェのウフィツィ美術館だけかも。
ピナコテカはバチカン美術館のどこにあるの?
ピナコテカ(絵画館)は、入口すぐの総合案内所から、他の有名な見どころ(システィーナ礼拝堂やラファエロの間、ピオ・クレメンティーノ美術館など)とは、方向が別になります。
他の見どころは入口から左の方へ進みますが、ピナコテカはPinacotecaという表示に従って右折します。
つまり、ラファエロの間やシスティーナ礼拝堂を見る順路ではピナコテカは通らず、いったん総合案内所に戻ってから、ピナコテカへ行くという構造になっています。
ピナコテカを見る場合の順路はどうする?
ピナコテカをどうしても見る!という人は、システィーナ礼拝堂より先にピナコテカを見て、地下のカフェで休憩してからシスティーナ礼拝堂へ行くとよいです。
朝一でシスティーナ礼拝堂だけを先に見学→ピナコテカ→ピオ・クレメンティーノ美術館やラファエロの間→システィーナ礼拝堂を再見学という順路もおすすめです。
逆に、ピナコテカは時間があったら行ければよいという人は、先にラファエロの間やシスティーナ礼拝堂を見て、入口に戻ってきたときに、時間と余力があればピナコテカまで行くという順番がよいでしょう。
バチカン美術館の鑑賞に必要な所要時間は?
バチカン美術館は、所蔵作品が多いだけでなく、館内自体も非常に広いです。
人気の高いシスティーナ礼拝堂とラファエロの間は、順路の最後の方に当たります。
そこにたどり着くまでに、他の作品をじっくり鑑賞しているうちに、時間が無くなってしまう…なんてこともありますので、自分の予定と合わせて鑑賞しましょう。
鑑賞に必要な所要時間は…というと、全てをゆっくり堪能しようと思うと丸一日はかかります。
この記事で紹介した4つの見どころ、システィーナ礼拝堂+ラファエロの間+ピオ・クレメンティーノ美術館+ピナコテカを重点的に見学する場合でも、半日程度(4~5時間)は欲しいです。
4つの見どころの中からピナコテカ以外の3つを重点的に見学するなら、3時間が目安。
ピオ・クレメンティーノ美術館ではラオコーンだけをサッと見て、あとはラファエロの間+システィーナ礼拝堂を見学するという方法でも、移動そのものに時間がかかるので、2時間は見積もっておいた方がよいです。
本当に時間がない場合はラファエロの間+システィーナ礼拝堂だけの見学にしぼって、1時間半くらいが目安です。
バチカン美術館まで来て「ラファエロの間とシスティーナ礼拝堂を見ない」という選択肢はナシだと思います。入館料がもったいなさすぎる…
所要時間の目安
全てをじっくり見学 | 丸1日以上 |
4つの見どころを重点的に見学 | 半日(4~5時間) |
ピナコテカ以外の3つを重点的に見学 | 3時間 |
ラオコーンをサッと見学+ラファエロの間+システィーナ礼拝堂 | 2時間 |
ラファエロの間+システィーナ礼拝堂 | 1時間半 |
こちらの記事もご参照ください
バチカン美術館を回るモデルコースを所要時間別に3つ作ってみました!結構自信作なので、よろしければ合わせてご覧くださいませ。
バチカン美術館のレストラン・カフェ
1日かけてでも、ゆっくりバチカン美術館を堪能したい人は、美術館内のレストラン・カフェを利用しながら休憩することになると思います。
が!
この、レストランとカフェが………。
まず、0階(=地上階…日本では1階に当たる)の食堂。セルフサービスのレストランで、学食みたいな雰囲気です。ですが、値段は学食よりも高くB級グルメ級、で、味は学食です。
それでも、自分は学生だと暗示をかけ、値段のことを考えないようにすれば、食べられない程のことはありません。
そして、こちらも0階にあるカフェ…。
注文したものを、広々とした中庭で食べたり飲んだりできるのは気持ちいいのですが、注文した紅茶は、人生で飲んだ紅茶の中で一番不味いシロモノでした。
熱湯が、明らかに耐熱性でないビニールカップに入れて出されましたよ。その中にティーパックを自分で入れて飲みなさいよ!という紅茶でした。
そんなバチカン美術館のレストラン&カフェですが、バチカン美術館内は持ち込み飲食禁止なので、長く滞在する場合は利用せざるを得ません(持ち込んだ飲食はクロークに預けなければならない)。
…ので、行き方を説明しておきます。
総合案内所から右手、ピナコテカ方面にある階段を下ります。
すると、フードコートレストラン、カフェ、ピッツェリア(ピザ屋)が集まっているエリアがあります。案内板もあるので、行き方はそれほど難しくありません。
バチカン美術館は予約が必須?
バチカン美術館は公式サイトでオンライン予約ができます(http://mv.vatican.va/)。
私が2回バチカン美術館に足を運んだ感じだと、同じローマ内の、サン・ピエトロ大聖堂やコロッセオ程は行列にならない、という印象でした。
…が、最近のバチカン美術館の混雑はスサマジイとのこと。時間の節約のためには予約が無難でしょう。
人が少ない時間帯の開館直後の朝一、8:00の予約を取るのがおすすめです。
バチカン美術館のお役立ち情報・注意点
バチカン美術館の館内マップはあるの?
バチカン美術館は、あまりに広くて途方に暮れますが、無料で持ち歩ける紙の館内案内図は置いてありませんでした。
詳しい館内の地図つきのガイド本を持ち歩きたいところですが、バチカン美術館は広くて疲れますので、なるべく荷物を減らすため、コピーもしくは必要な部分を切り取って持っていくことをおすすめします。
または、バチカン美術館の公式サイトで、PDFファイルの館内マップを見ることもできます。
この館内マップ、ちょっと探しづらい箇所にあります。
バチカン美術館公式サイトの左側、メニューアイコン(①)をクリックし、Useful advice(②)をクリック。
結構下の方に「Map of the Vatican museums」があるので、そこのリンクになっている「map」をクリック。これでPDFファイルの館内図が出てきます。
バチカン美術館内の荷物預かりはどうなっている?
バチカン美術館の入口、総合案内所近くにクロークがあり、荷物を無料で預けることができます。
このクロークは、エントランスよりも内側にあり、バチカン美術館の見学途中で立ち寄って、必要なものを取りに行くこともできます。
なるべく疲れないように、身軽になって大美術館に突撃しましょう!
また、バチカン美術館の展示エリアには持ち込めないものがいくつかあります。下記のものはクロークに預ける必要があります。
クロークに預けなければならないもの
- 大きな荷物(40㎝×30㎝×15㎝以上)
- 厚み15㎝以上のバックパック
- 折り畳めない傘
- 歩行用でない杖・スティック
- ナイフ・ハサミ類
- 飲食物
逆にクロークで預かってもらえないものは、以下のものです。
クロークで預かれないもの
- 上着類(バッグの中に入れて預けるのはOK)
- 貴重品
- スマートフォン、タブレット類
- カメラ類
厳密には「館内に飲食物持ち込み禁止」のバチカン美術館ですが、お水のペットボトル1本程度は、見逃してもらえることもあります。
その場合でも展示エリアでは飲めないので、必ず中庭などの休憩エリアに出てから飲むようにしましょう。
バチカン美術館の荷物預かりの詳しいルールは、公式サイトのこのページのCloakroom regulationsにあります。
バチカン美術館は服装チェックが厳しい?
バチカン美術館そのものはドレスコードは厳しくありませんが、システィーナ礼拝堂だけは宗教施設のため、露出が激しい服装では入れません。
システィーナ礼拝堂の服装チェックは、サン・ピエトロ大聖堂ほどは厳しくない印象です。
ですが、順路の後ろの方にあるシスティーナ礼拝堂までようやくたどりついて、中に入れてもらえないなんて事があっては大変ですので、心配な場合はカーディガンやストール類を持って行きましょう。
夕方にバチカン美術館に行く場合は要注意!
混雑の少ない時間を狙って、閉館前の夕刻にシスティーナ礼拝堂に行ったことがありますが、なんと閉館30分前には追い出されました!
他の見学客がスタッフに文句を言っていましたが、もちろん問答無用で追い出されました。
公式サイトにも実は書いてあるんですよね…。
理不尽なルールではありますが、閉館前の時間帯にシスティーナ礼拝堂に行く場合は、閉館時間の30分前がタイムリミットだと考えて、余裕を持って行動しましょう。
まとめ
バチカン美術館ガイドに長々とお付き合い頂きありがとうございました!
私はバチカン美術館に2回入ったことがあります。
1回目は朝イチでラファエロの間・システィーナ礼拝堂へ向かったのに、ラファエロの間からシスティーナ礼拝堂まで遠回りをしてしまいました。
2回目は夕方の空いた時間を狙って入館したことがアダとなり、閉館30分前に追い出されてシスティーナ礼拝堂を堪能できませんでした。
システィーナ礼拝堂をじっくり見たいので、3回目の訪問を虎視眈々と狙っていますが、次こそ失敗のない鑑賞をしたいっ!
このページを読んでくださった方は、私みたいな失敗をしないように、バッチリ予習&準備して、バチカン美術館を美しく攻略してくださいね!
「バチカン美術館の回り方」は別の記事で当サイトのオリジナルモデルコースをご紹介しています。よろしければ合わせてご覧くださいませ→バチカン美術館の回り方!全長7㎞を攻略するモデルコース3選
また、「バチカン美術館にある有名作品をサックリ知りたい!」という方には、こちらの記事がおすすめです→バチカン美術館には何があるの?有名作品33選を一覧で!
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