バチカン美術館とは?
ローマのバチカン美術館とは。
カトリックの総本山・バチカン市国内にある、歴代の教皇が威信をかけて集めた芸術品を展示している、世界に名立たる美術館です(バチカン博物館とも言われます)。
美術館内には、人類の芸術作品の最高峰との呼び声高い、ミケランジェロの「天地創造」「最後の審判」といった天井画・壁画で装飾されたシスティーナ礼拝堂があります。
システィーナ礼拝堂以外にも、ラファエロの「アテネの学堂」などの傑作壁画、ヘレニズム時代の傑作彫刻「ラオコーン」、ルネサンスの巨匠たちの絵画を多く展示する絵画館など、見どころが多すぎる美術館で、ローマ観光では外せないスポットです。
このページではバチカン美術館の見どころや、所要時間の目安、予約が必要かどうかなど、バチカン美術館訪問に役立ちそうな情報を、マニュアルとしてまとめてみました。
ちなみに、バチカン美術館は、内部に複数の美術館があり、バチカン美術館という呼び名はその総称です。そのため、イタリア語では、「musei」と、英語のmuseumに当たる単語が、複数形になっています。
バチカン美術館の見どころ!ここだけは見逃せない!
広い広いバチカン美術館。
丸一日滞在しても、そのすべてをじっくりと見ることはできないくらい広いです。
そのため、時間が限られた観光の場合は、ポイントをしぼって観賞することをおすすめします。
まずは、「バチカン美術館に入ったらココだけは外せない!」という見どころをご紹介します。
システィーナ礼拝堂
システィーナ礼拝堂(Cappella Sistina)は、言わずと知れた、バチカン美術館最大の見どころです。
ミケランジェロの天井画「天地創造」、後方の壁画「最後の審判」だけでもお腹いっぱいになりそうなのに、側面の壁も、ボッティチェリ、ギルランダイオ、ペルジーノ、ルカ・シニョレッリなどの、ルネサンス期の巨匠が競作した壁画で埋め尽くされています。
順路は最後の方に位置しているので、システィーナ礼拝堂を目当てにバチカン美術館に行く場合は、システィーナ礼拝堂にたどり着く前に力尽きないように、体力を温存して鑑賞して下さい。
バチカン内は広いですが、システィーナ礼拝堂の案内表示は、館内至る所にあるので、迷わずにたどり着けます。
システィーナ礼拝堂は写真撮影や過度のおしゃべりは禁止
イタリアでは、美術館系観光スポットの写真撮影解禁の流れがあります。
バチカン美術館自体は、撮影OKのエリアが多いですが、システィーナ礼拝堂内部は、写真撮影禁止です(このページの写真も、無料画像を配布しているサイトから頂いたもの)。
また、礼拝堂内での座り込みや、大きな声でのおしゃべりが禁止されていて、係員やアナウンスに注意されます。
(しかし、神妙な面持ちの係員たちは、人が少ない時間帯にはキャッキャとふざけ合っているのを私は目撃したぞ…。)
「天地創造」観賞にオペラグラスは必要?
ミケランジェロの「天地創造」は天井画で、見上げて観賞します。
天井は20メートルほどの高さで、オペラグラスを持ち込んで天井画を鑑賞する人もいます。
私は荷物を増やしたくなかったので、オペラグラスは持って行きませんでした。
私の視力はコンタクト入れて1.0くらい程度ですが、肉眼でじゅうぶん楽しめました。
よっぽど細部が見たいというのでなければ、オペラグラスは必須ではないです。
システィーナ礼拝堂を最も空いた状態で見るには?
バチカン美術館最大の見どころであるシスティーナ礼拝堂は、いつも大混雑しています。
なるべくすいた状態で見る技としては、朝一番でバチカン美術館に入場し、他の展示室には脇目もふらず、一心不乱に「Cappella Sistina」の矢印に従って、まっすぐシスティーナ礼拝堂を目指すのがおすすめです。
いっしょに朝一番で入場した人のほとんどは、他の見どころでも足を止めます。
他の人がたどりつく前に、一直線にシスティーナ礼拝堂まで行ってしまえば、一番乗りで人が少ない状態で見学できます。
この方法で、ラファエロの間も人が少ないうちに見てしまうのもありです(順路では、システィーナ礼拝堂よりラファエロの間が先にあります)。
さて、この方法だと、すっ飛ばしてしまった展示室が後から見学できないのでは?と心配になると思いますが、広い広いバチカン美術館には、総合案内所のような、クロークやオーディオガイド貸出カウンターがあるエリアがあります。
この総合案内所がバチカン美術館鑑賞のスタート地点で、それぞれの見所を見て回った後は、美術館を退館する前に、総合案内所に戻れる構造になっています。
ですので、システィーナ礼拝堂を見た後、総合案内所に戻ってくれば、また、最初から見学しなおすことができます。
私は、初めてバチカン美術館に行ったとき、この構造を知らなくて、先にシスティーナ礼拝堂を見た後、必死で逆走して後戻りしました。あの時、キミは若かったなあ…。
システィーナ礼拝堂の後に、総合案内所に戻ってくるのは、それほど難しくありませんが、時々、間違ってピエトロ大聖堂側に続く道に迷い込んでしまう人がいるようです(この道はいつも開放しているわけではないそうですが)。
心配な場合は、システィーナ礼拝堂を見学した後、館内のスタッフに、「カフェテリア」か「ピナコテカ(絵画館)」に行く道を尋ねるようにすれば、総合案内所に戻って来れます(どちらもいったん総合案内所に戻ってから行く構造のため)。
ラファエロの間
システィーナ礼拝堂に次ぐバチカン美術館の人気スポットが、ラファエロの間(Stanze di Raffaello)です。
ラファエロと、その弟子が天井画・壁画を手掛けています。ここで鑑賞できる壁画「アテネの学堂」はあまりにも有名です。
私が一番感動したのは、ヘリオドロスの間にある「聖ペテロの解放」です。
天使が、収監されている聖ペテロを助けに来る場面を描いています。
ラファエロの間は、時期によっては、最初に外の通路を通って、一番奥のコンスタンティヌスの間から順に見学となることがあります。
そのせいで方向感覚がおかしくなることがありますが、奥からの見学でも、全ての部屋を見学できるようになっています(修復中でなければ)ので、順路通り進めば、どこかの部屋を飛ばしてしまう心配はありません。
ベルヴェデーレの中庭にある「ラオコーン」
システィーナ礼拝堂とラファエロの間が、バチカン美術館の二大人気スポットですが、三番目は何かというと、やはり、「ラオコーン」を推したいです。
世界史の教科書でも見たことがあると思いますが、ヘレニズム期の傑作と言われる(制作年代には諸説あり)、トロイの神官ラオコーンが女神アテナの放った蛇に、絞め殺されてしまう場面の彫刻作品です。
このラオコーンがあるのは、ピオ・クレメンティーノ美術館(Museo Pio-Clementino)内にあるベルヴェデーレの中庭です。
ピオ・クレメンティーノ美術館は、飛ばしてシスティーナ礼拝堂まで行けるので、スルーしてしまう観光客も多いですが、時間に追われていなければ、ぜひラオコーンだけにでも対面してくることをおすすめします。
ちなみに、ラオコーンの近くには、アポロ像、ペルセウス像といったイケメン像もありますよ!
ピナコテカ(絵画館)
バチカン美術館には、絵画作品を集めた「絵画館」、イタリア語でピナコテカ(Pinacoteca)があります。
このピナコテカは、システィーナ礼拝堂や、ラファエロの間の人気ぶりに押されてしまって、いまいち目立たない存在ですが、鑑賞せずに済ませるには惜しすぎる、すさまじいコレクションです!
ラファエロの絶筆を含む三作品(その他小作品もある)、カラヴァッジョ、フィリッポ・リッピ、レオナルド・ダ・ヴィンチの未完成作品と、イタリア絵画好きには必見の作品が目白押しです。
個人的に特に鑑賞をおすすめしたいのが、画像の、メロッツォ・ダ・フォルリの「奏楽の天使」。
もともとサンティ・アポストリ聖堂という教会にあった壁画を、教会が取り壊される際に、壁だけ剥がしてバチカン美術館に持ってきたものだそうです。
そのため、ひび割れた壁に描かれた天使たちが、断片的に残っているのですが、ひびが入っていようと、主がいなかろうと(同じ絵の中心に描かれていたキリストの絵だけは、現大統領官邸にあるらしい)、音楽だけは響き続けている…みたいな、ちょっと感動を覚える絵です。
ピナコテカはバチカン美術館のどこにあるの?
ピナコテカ(絵画館)は、入口すぐの総合案内所から、他の有名な見どころ(システィーナ礼拝堂やラファエロの間、ピオ・クレメンティーノ美術館など)とは、方向が別になります。
他の見どころは入口から左の方へ進みますが、ピナコテカはPinacotecaという表示に従って右折します。
つまり、ラファエロの間やシスティーナ礼拝堂を見る順路ではピナコテカは通らず、いったん総合案内所に戻ってから、ピナコテカへ行くという構造になっています。
ピナコテカを見る場合の順路はどうする?
ピナコテカをどうしても見る!という人は、システィーナ礼拝堂より先にピナコテカを見て、地下のカフェで休憩してからシスティーナ礼拝堂へ行くとよいです。
朝一でシスティーナ礼拝堂だけを先に見学→ピナコテカ→ピオ・クレメンティーノ美術館やラファエロの間→システィーナ礼拝堂を再見学という順路もおすすめです。
逆に、ピナコテカは時間があったら行ければよいという人は、先にラファエロの間やシスティーナ礼拝堂を見て、入口に戻ってきたときに、時間と余力があればピナコテカまで行くという順番がよいでしょう。
バチカン美術館の鑑賞は、所要時間はどのくらい?
バチカン美術館は、所蔵作品が多いだけでなく、館内自体も非常に広いです。
おそらく、全てをゆっくり堪能しようと思うと、丸一日はかかると思います。
人気の高いシスティーナ礼拝堂とラファエロの間は、順路の最後の方に当たります。
そこにたどり着くまでに、他の作品をじっくり鑑賞しているうちに、時間が無くなってしまう…なんてこともありますので、自分の予定と合わせて鑑賞しましょう。
ラオコーン+ラファエロの間+システィーナ礼拝堂の3つだけを鑑賞するという人でも、移動そのものに時間がかかるので、1時間半~2時間は念のため見積もっておいた方がよいと思います。
ピナコテカ(絵画館)まで見たい場合は、途中に休憩を挟んで、半日程度はバチカン美術館に費やすのがおすすめです。
バチカン美術館のレストラン・カフェ
1日かけてでも、ゆっくりバチカン美術館を堪能したい人は、美術館内のレストラン・カフェを利用しながら休憩することになると思います。
が!
この、レストランとカフェが………。
まず、地下の食堂。セルフサービスのレストランで、学食みたいな雰囲気です。ですが、値段は学食よりも高くB級グルメ級、で、味は学食です。
それでも、自分は学生だと暗示をかけ、値段のことを考えないようにすれば、食べられない程のことはありません。
そして、カフェ…。
注文したものを、広々とした中庭で食べたり飲んだりできるのは気持ちいいのですが、注文した紅茶は、人生で飲んだ紅茶の中で一番不味いシロモノでした。
熱湯が、明らかに耐熱性でないビニールカップに入れて出されましたよ。その中に、ティーパックを自分で入れて飲みなさいよ!という紅茶でした。
このカフェを利用するなら、市販の水とお菓子を買って休憩するのが無難かなあ…。
バチカン美術館のマップを見ると、システィーナ礼拝堂近くにもカフェがあるようですが、こちらには入っていないので味は未確認です。
バチカン美術館は予約が必須?
バチカン美術館は公式サイトでオンライン予約ができます(http://mv.vatican.va/)。
私が行った2月、3月は行列は無しでした。
私が2回バチカン美術館に足を運んだ感じだと、同じローマ内の、サン・ピエトロ大聖堂やコロッセオ程は行列にならない、という印象です。
予約が必ずしも必要とは思いませんが、ハイシーズンに訪問予定で、時間を節約したい場合は、公式サイトでも英語で予約できるので、予約しておいた方が無難だと思います(予約料€4がかかります)。
日本語でオンライン予約したい場合は、楽天グループの会社「Voyagin」での予約が、リーズナブルな価格設定になっています。
バチカン美術館のミニ情報 館内情報・服装など
バチカン美術館の館内マップはあるの?
バチカン美術館は、あまりに広くて途方に暮れますが、無料で持ち歩ける館内案内図はありません。
詳しい館内の地図つきのガイド本を持ち歩きたいところですが、バチカン美術館は広くて疲れますので、なるべく荷物を減らすため、コピーもしくは必要な部分を切り取って持っていくことをおすすめします。
または、バチカン美術館の公式サイトで、PDFファイルの館内マップを見ることもできます
左下の「Maps」のコーナー、一番上が館内マップです。
バチカン美術館内に館内マップがなかったのは、2015年の状況です。現在は置いてある可能性もあるので、入口近くの総合案内所で、念のため確認することをおすすめします。
バチカン美術館内に荷物を預ける場所はあるの?
バチカン美術館の入口、総合案内所近くにクロークがあり、荷物を預けることができます。
このクロークは、エントランスよりも内側にあり、バチカン美術館の見学途中で立ち寄って、必要なものを取りに行くこともできます。
なるべく疲れないように、身軽になって大美術館に突撃しましょう!
バチカン美術館は服装チェックが厳しい?
バチカン美術館そのものはドレスコードは厳しくありませんが、システィーナ礼拝堂だけは宗教施設のため、露出が激しい服装では入れません。
システィーナ礼拝堂の服装チェックは、サン・ピエトロ大聖堂ほどは厳しくない印象ですが、順路の後ろの方にあるシスティーナ礼拝堂までようやくたどりついて、中に入れてもらえないなんて事があっては大変ですので、心配な場合はカーディガンやストール類を持って行きましょう。
夕方にバチカン美術館に行く場合は要注意!
混雑の少ない時間を狙って、閉館前の夕刻にシスティーナ礼拝堂に行ったことがありますが、なんと閉館30分前には追い出されました!
他の見学客がスタッフに文句を言っていましたが、もちろん問答無用で追い出されました。
理不尽なルールではありますが、閉館前の時間帯にシスティーナ礼拝堂に行く場合は、閉館時間の30分前がタイムリミットだと考えて、余裕を持って行動しましょう。
バチカン美術館
イタリア語:musei vaticani(ムゼイ・ヴァティカーニ)
公式サイト:http://mv.vatican.va/
日本語で予約できるサイト:Voyagin VELTRA
旅行記:2013年その1 2013年その2